シングルセル(1細胞)遺伝子発現解析とは
シングルセル(1細胞)遺伝子発現解析とは、従来の細胞集団(バルク)として見てきた遺伝子発現解析と異なり、単離した細胞であるシングルセル(1細胞)毎で行う遺伝子発現解析です。細胞の多様性や不均一性を見る手法です。
これまでのバルク解析では解明できなかったがん組織における多様な免疫抑制環境などについてシングルセル(1細胞)遺伝子発現解析の導入により明らかになりつつあり、今後のがん治療への応用が期待されています。
Fluidigm C1の発売をきっかけにしてシングルセル解析が一気に普及し、現在では様々なプラットフォームが誕生しました。それぞれメリット、デメリットがあるので研究課題や予算(装置新規導入コストとランニングコスト)に合わせたベストな手法、プラットフォームを選択する必要があります。各種手法やプラットフォームにより若干の違いはありますが、シングルセル遺伝子発現解析の大まかなプロセスは下記になります。
シングルセル遺伝子発現解析フローチャート
①細胞/サンプル調製
シングルセル又は単一核のサンプル懸濁液を、組織、血液、生検体、腫瘍、培養細胞、植物片、真菌類(酵母など)、プロトプラストなどから調整します。
②単離/mRNA捕捉(ドロップレット式の場合)
~1万個程度のシングルセル(1細胞)を個々にドロップレットやマイクロウェルなどの区画に個別バーコード(識別)配列を持ったビーズやゲルなどのmRNA捕捉粒子とペアでサンプルを単離します。この過程で2個の細胞が同区画内に入る確率(ダブレット率)が高いと後のデータ精度に影響を及ぼします。プラットフォームを選ぶ際は、細胞のダブレット率を比較することが重要になります。また、処理する数量が多い場合はダブレット率も高くなるので比較する際は同じサンプル数でのダブレット率を見る必要があります。
細胞を単離する際は、細胞溶解液をmRNA捕捉粒子と共に加えることで細胞単離後に細胞溶解、mRNA捕捉を区画内で行うことができます。
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③逆転写/cDNA合成
バーコード(識別)配列を持ったビーズやハイドロゲルなどの粒子によって捕捉されたmRNAは回収され、逆転写反応によって個別識別配列を持ったcDNAの第1鎖が合成されます。
④PCR/品質チェック/ライブラリー調製
合成されたcDNAを鋳型としてプライマーが結合し、PCRによって増幅されます。PCR産物を回収し、必要に応じてNGS実施前に産物の品質チェックのため電気泳動などを行います。NGS用のキットなどを用いてライブラリー調製を行います。NGSには費用が掛かる為、一定の品質が確保されたサンプルのみを次工程に回した方が良いです。
⑤NGS
イルミナ社のHiSeq 3000、HiSeq 4000、NextSeq、MiSeqなどの次世代シーケンサーによる配列解析を行います。
⑥データ解析
トリミング、マッピング、正規化、可視化/クラスタリングなどのデータ処理を行い、細胞の解析を行います。
シングルセルRNA-seq解析及びシングルセルレパトア解析の受託サービス
受託サービスは下記にて提供されております。
- 株式会社CyberomiX(外部ページへ)
- KOTAIバイオテクノロジーズ株式会社(外部ページへ)
- 大阪大学微生物病研究所 遺伝情報実験センター(外部ページへ)
参考文献
- Gross, Andre et al. “Technologies for Single-Cell Isolation.” International journal of molecular sciences vol. 16,8 16897-919. 24 Jul. 2015, doi:10.3390/ijms160816897
- Macosko, Evan Z et al. “Highly Parallel Genome-wide Expression Profiling of Individual Cells Using Nanoliter Droplets.” Cell vol. 161,5 (2015): 1202-1214. doi:10.1016/j.cell.2015.05.002
- Nguyen, Quy H et al. “Experimental Considerations for Single-Cell RNA Sequencing Approaches.” Frontiers in cell and developmental biology vol. 6 108. 4 Sep. 2018, doi:10.3389/fcell.2018.00108
- Valdes-Mora, Fatima et al. “Single-Cell Transcriptomics in Cancer Immunobiology: The Future of Precision Oncology.” Frontiers in immunology vol. 9 2582. 12 Nov. 2018, doi:10.3389/fimmu.2018.02582
- Valihrach, Lukas et al. “Platforms for Single-Cell Collection and Analysis.” International journal of molecular sciences vol. 19,3 807. 11 Mar. 2018, doi:10.3390/ijms19030807